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名古屋高等裁判所 昭和46年(ラ)99号 決定 1971年8月09日

抗告人 高橋正昭

相手方 岐阜整染株式会社

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

(抗告の趣旨と理由)

1  抗告人は総会その他の場所に於て名も知らぬ多くの株主から同意や励ましを受けてこの訴訟を行つたもので、抗告人はこれによつて一銭の利益も受けず、ただ正義のためと思い行つたもので悪意はない。

2  原決定の理由にある「右臨時総会で右議案が満場一致で可決されたこと、抗告人は定期総会では合併に反対したが後の臨時総会では反対の意思表示をしなかつた」というのは伊藤真吾の偽証によるものであり本訴の争点となつている。

3  相手方の株価については合併比率が不適当であつた点も本訴の争点となつている。

よつて原決定は不服であるから抗告する。

(当裁判所の判断)

本件に対する原決定の理由は当裁判所が示そうとする理由と一致し原決定は相当であつて本件抗告は理由がないと考えるので原決定理由をここに引用し次の説明を付加する。

抗告人は、同人が本件株主総会決議取消の訴を提起したのは利益を受ける目的ではなく専ら正義のためであると主張しているが相手方提出の疎明方法によれば相手方はそのレイパー理工株式会社との合併については監査法人の査定を受け、昭和四五年一二月一六日の定時総会と翌年一月二七日の臨時総会に提案し定時総会では一部に異見はあつたが臨時総会では適法に可決されたこと、その後抗告人は二回にわたり相手方を訪れ、相手方が第三者に評価してもらつた適正価格と認められる一株当り一三〇円ないし一四〇円より遙かに高価な一株当り四、五百円で持株を買取れと申入れていること、抗告人がかかる場合に決議反対の株主に認められている株式買取請求権を行使していないことが疎明されること原決定のとおりであるから抗告人の訴訟提起は悪意のもとになされたと認めて差支えなく、むしろ抗告人のいう専ら正義のためという主張を裏付ける具体的な主張がないのであるから原決定に違法はない。

抗告人は原決定にいう右の合併決議は臨時総会で満場一致で可決されたこと、抗告人は定時総会では合併に反対したが臨時総会では反対の意思表示をしなかつたというのは偽証のための事実誤認であるという。然しながら原審における伊藤真吾審訊の結果によると抗告人は定時総会の時には合併比率について反対の意思表示をしたが臨時総会の時は反対せず、満場一致で可決された後に一対一の合併比率に反対の発言をしたというのであるからこの事実認定に誤りはなくこれが偽証にもとづくものだという資料はないからこの主張も採用できず、又一対一という合併比率が不当だという主張は、相手方が監査法人の査定を受け妥当としたものであつてこれが不当と考え得る資料はないからこれを以て不当という主張は採用できない。

以上のごとくであつて原裁判所が抗告人の訴提起に対し相手方の申立により金五〇万円の担保の供託を命じたのは相当であつて本件抗告は理由がないのでこれを却下し抗告費用は抗告人の負担として主文のとおり決定する。

(裁判官 奥村義雄 広瀬友信 菊地博)

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